2017-08-15 Tue
いったん募集が窮地に陥った学校が復活できた例も少ないながらもあるわけで、今回はそこを考えてみようと思います。
女子校から共学募集に舵を切り、いまでは進学校として
人気を集めている広尾学園です。
前身は順心女子学園。1918年の創設ですから、
そこから数えるともうすぐ100年の歴史を刻む伝統校です。
校名を変更して高校で共学募集を開始したのは2007年。
高入生の共学化1期生が卒業したのは2010年です。
データを見てみると、この年の進路実績は男女も含めて
内訳非公開。進学者数として早慶上智5名、MARCH12名とあります。
男女別も一貫生・高入生別も合格者数も公開していません。
学校が目指しているラインには到達しておらず不本意だったのかもしれません。
この時点では、その3年後の数字は読めませんし、共学化の成果に
ついては判断できません。
卒業生176名中、男子はわずかに34名。この年は特進1類、特進2類、
と芸術コースに分かれていました。もちろん女子校時代の内進生も
多く含まれていました。
ちなみに女子校時代の卒業者数の推移を見ると、2001年には254名だったのが、
2006年には102名、共学化直前の2009年には108名と激減しています。
つまり2004年以降の中高募集で思うように盛り返せなかったことも
含めて、改革の覚悟を決めたということも言えそうです。
それでも共学化当初は募集するにあたって特進という単語を
使っているのが興味深いところです。
ところが早くも2010年から高校募集の形態が変わり始めます。
共学初年度の[特進1類、特進2類、芸術コース]は
[特進1類、特進インターナショナル]となり、
翌年は
[医進サイエンス、特進1類、特進インターナショナル]
と変わります。
同時に中学募集も2009年までの[特進選抜、特進一貫]から
[特進選抜、特進インターナショナル]
へと変化を見せます。
当時、広報担当者に取材した記憶がありますが、
「同じ特進でも一貫と選抜で差がなくなってきたので一本化した」
という回答があったのが記憶に残っています。
2011年には中学募集にも医進サイエンスの文字が見られるようになり、
2012年には「特進」の文字が消えます。
そしてここから本科クラス・インターナショナルクラスの概念が登場します。
2015年には中学時点から医進サイエンスという名称のクラスが
1クラス編成されるようになります。
広尾学園が緻密だと思うのは、単にクラスの序列で特進1、特進2などと
並べるのではなく、それぞれの交流を可能に設定した上で、
特定の志向の強いクラス分けを試みたことでしょう。
実質的には医進サイエンスは最上位なのでしょうが、
最初は高校時点のトップクラスというイメージで、一貫生・高入生を
集めたように見えます。
一貫生が想像通りの伸びを見せたことで、
高入生が一貫生に食らいつく絶妙のバランスになっていったように
見えます。
当時の校長先生にこう尋ねたことがありました。
「一貫生が順調に伸びれば、近い将来高校募集は停止ですね」
すると校長先生は
「それはしません。高校募集は続けます」
とのことでした。
あくまでも完全な成績別クラス編成ではないので、
断言はできませんが、
手元の資料によればある年度の
医進サイエンスの高入生比率は
高1=25%、高2=14%、高3=3%
バラツキがあるようですが、逆に言えば現状で
高校募集もしっかりできているということが言えます。
今度は結果が出ると、中学募集で人気が出て難化することで、
高校募集と両立させにくくなるわけですが、
双方の入学手続者数が流動的な中で、予断は許さないとは思いますが、
この学校は巧みなバランス感覚を持っているように見えます。
中高一貫の共学化1期生卒業の2013年には高入生は113名でしたが、
中学入学者が増えるにつれて、高入生は徐々に減少し、
2016年には30名となりましたが、以降は戻して
2016年には50名前後の高入生が入学しています。
今後は一貫生の数が300名近い学年もありますから、
高入生の枠を確保しておくのは大変でしょう。
それ以上に、難化しても高校受験生に敬遠されず、
高校からも入りたい学校として存在し続けるためには、
そのの魅力を発信し続ける不断の努力が必要でしょう。
もちろん都立(高校)上位校の併願者にとっては、
共学の進学校が少ない東京の事情も絡みます。
そこには内的な目標設定と、現状把握があっての
この結果だと推測せざるを得ません。
他校がこの学校を成功例として
簡単に模倣できない理由は、こうした
クラス編成・生徒数の推移にも表れているようです。
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【最新2010-2016】学校別・進路実績7年間推移グラフ・リンク一覧
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