2017-06-20 Tue
進路実績の低迷。外野から数字だけを見て客観的に論評するだけなら簡単なことかもしれません。
学校として現状認識がしっかりなされていない、
というわけでなく、さまざまに対策を講じているのに
長期低落から脱することができないのかもしれません。
学校に限らず、複数の改善・改革を継続して
その結果を自己評価しながら、前進しているつもりでも
受験生(ユーザー)から支持されない場合もあるでしょう。
ただカリキュラムをいろいろ工夫して、
授業理解度にも問題がないのに
進路実績だけが伸び悩む…そんなことはまずないと思うのです。
他校の成功事例を集めて、生徒たちの進学モチベーションが
上昇するように試行錯誤する。これは歴史ある学校ほど、
過去の実績がある学校ほど、プライドが邪魔してしまうような気もします。
まず受験者数が減少する。入試の難易度が下がる。入試回数を増やす。
苦戦している学校に共通する特徴です。
すでに受験者数レベルで募集定員を割り込んでしまうほどであれば、
回復はかなり困難です。でも、そこまで至っていないとすれば、
まだ大丈夫かもしれない、の思いが学校側に残っていると
言えないでしょうか。
きょうは神奈川の桐蔭学園です。男女募集ですが中1~高2までは
男女別クラス。高3で共学クラスになります。
高校募集も行う大規模校で、かつては学業もスポーツも全国レベルを
誇っており、首都圏でもこの桐蔭学園を成功モデルとして
イメージしている私立中高一貫校が何校もあったような気がします。
学年規模が非常に大きいため、まずは難関大も合格者の絶対数では
多くが全国1位だった時代も長かったように思います。
それがある時期から進路実績の不振が止まらなくなっています。
まずは受験者数。
2007年に1878名だった総受験者数は10年を経て839名に半減。
いっぽうで2010年には3回入試を4回に。
2015年には2/2に午後入試を導入し、5回入試になりました。
ひとつのターニングポイントは2001年に開設した中等教育学校ではないかと
見ます。
2009年に1313名であった卒業者数は2017年には945名。
これは学年規模が徐々に縮小したことを意味します。
とはいえ他校と比較すれば飛び抜けて大きな数字で、縮小そのものが
問題であるとは思いません。
問題は難関大合格の比率です。
今回は手元にあるだけのデータを遡ってみます。
国公立大の自己ベストは2005年の20.7%。
2017年春は9.7%。
早慶上智のベストは1998年の66.4%。
2017年春は20.2%。
MARCHのベストは2014年の65.5%。
2017年春は52.9%。
この数字の変化には背景があります。
2009年以降は結果的に
男子のみの中等教育学校に成績上位生が集中し、
従来型中高の国公立大、早慶上智実績においては
大きく差が開いたと思われるからです。
つまり、男子校の中等教育学校は桐蔭学園全体の
特進クラス的な位置づけになったと言えるかもしれません。
17年春の中等教育学校の実績は
国公立大が20.2%、早慶上智が63.1%、MARCHは60.1%。
同じくそれぞれのベストは
国公立大が33.3%、早慶上智が87.9%、MARCHは97.3%。
ただし、従来型中高の学年規模が中等教育学校の5倍強である
ことを加味すると総合実績としてはどうでしょうか。
さらに気になるのは女子の貢献度。
中等教育学校は男子校で、従来型中高は男女募集でも基本は別クラス。
女子における中等教育学校的な位置には「理数クラス」があります。
学年規模縮小の中、10年前の2007年は41.8%あった女子比率は
2015年には32.5%までダウン。
これに男子のみの中等教育学校が加わるわけですから、
総合的な女子比率は22.7%にまで下がります(2015年データ)。
実人数では8年間で半減ですから、
「女子人気低迷」も失速の原因の
ひとつと見ていいでしょう。
桐蔭学園独自とも言える別学スタイル、
男女募集で中1~高2までは男女別クラス、高3で共学も
こうして結果が伴わないことには関心を集めません。
17年中学入試では女子は募集定員125名に対して、合格者合計は138名。
理数コースと普通コースを比較すると
実質倍率にはかなり差がありますが、
両コースは首都圏模試の結果偏差値データによれば、
80%偏差値で最大2程度しか違わないようです。
そこで学校サイトを見てみると、これらの現況を受けて、
中学募集は2019年入試から、中等教育学校に一本化、
従来の別学・併学スタイルを廃止、「男女共学」となることが
発表されています。
一気にどれだけ変われるか、注目したいところです。
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