2016-05-23 Mon
そろそろ遅まきながら2016年3月卒業生の大学合格実績調査を開始しています。順調にデータが集まるかどうかは、まったく見えませんが、ブログなので、
わかるところだけの抽出しかないかなあ、と思っています。
その前段として編集部時代からすごく不思議に思っていること、納得のいかないことを
きょうは書こうと思ってます。
受験案内本が売れるのは4月です。
いや早い出版社になると3月中に発行します。
いちばん売れるのは4月なのですが、一般読者はいつ受験案内本を手にしているのでしょう。
発行されてすぐ、とは考え難い。
まあ、版元と書店との取引(間に取次が入ります)は間違いなく4月に売り上げが
立ちますからそうなのですが、そこから徐々に返本されるわけです。
ひどい場合は、開封されずに返本。売れないから返本、という前に、
書店が版元に「そんなに送ってきても置けねえよ」というわけです。
って、このクレームは取次に行きますから、いくら印刷しても取次の時点で
「ことしは前年比90%でお願いします」と最初から間口を狭められるわけです。
売れないんだから作ってもしゃあないやろ、そういうわけです。
置く場所がない、と売れないはほぼごっちゃになっていますが、
2015年、2016年と2社撤退でも店頭が寂しいのは、
「受験案内本→不要・返本」の図式ができているからです。
読者・保護者にとっても重厚長大な案内本は不要と思うのかもしれませんね。
その需要の構造についてここで書こうと思ってはいません。
なぜ4月に発行?の答えは、
1.新年度だから
2.他社も4月だから
です。他社より早く出せば、より多く売れるだろう。
確かに。
でも売れるって誰が買うのでしょうか?
ある年、秋ごろにこんな読者からの問い合わせを編集部で受けました。
「来年はサンデーショック(2/1が日曜)の年にあたるはずだから、女子学院の入試日=2/1はおかしい。間違っている」
そうじゃなくて。
4月に発行された受験案内本の入試要項は、その年の1~2月に行われたものです、
とページそれぞれに注記されているではありませんか。
読者にすれば、「そんなこと知るか」らしいのです。
いつ発行されたかなんてどうでもいい。いま読んだら間違っていると思ったんだ。
もっとひどいケースになると、中学の案内本ではありませんが、古書店で見つけた
年度落ちの案内本の情報はこのままで来年も通用するか?という問い合わせも
受けたことがあります。
何を言いたいか、というと情報の扱いが消費する側、読者側で厳密でないとすると、
作り手も「それなり」で制作してしまうということ。
4月発行はデフォルトなので、間に合わない情報は前年の情報で、となります。
もちろんケースバイケースですが、自分が編集部を離れての翌年、
いま店頭に並んでいる各誌の「16年度大学合格者実績」は一部不完全である、
ということです。(多くの案内本で千葉大、埼玉大の合格実績はカウントされていないらしいです。)
「とりあえず速報」という奴です。精度70~80%でも、載っていないと
困るでしょう…。
それは東大合格が1名か2名か早く知りたい、という人はいないとは
限りません。
でも1年に1回しか発行しない書籍で、その精度の情報のまま、
発行せざるをえない状況に、非常に疑問を感じるのです。
このネット時代に「とりあえず」情報で印刷して流通させてしまう…。
実は読者も「大学合格実績を真剣に読み込んでいない」…。
大げさに言うなら、その点に疑問を感じ続けているから、
可能な限りはこうしてブログを続けて行こうと思うのです。
どうでもいいデータを何日も徹夜して必死に編集して、書店店頭に
並ぶ前に、門前払いのように返本。
現実は厳しいのですが、実は旧来の方法では、情報を求めている人々に
必要な情報が行き届かない世の中なのではないかと思うのです。
千単位、万単位じゃないと企画が成立しない、事業が成り立たないから、
発行中止。とても残念なことです。
じゃあ残存者利益は?ですよね。

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