2015-11-12 Thu
MARCH5大学の中の偏りの話の続きです。どれだけ継続的に分析すればいいか迷うところもありますが、
推移をあまりに長く観察すると結論が出ないので、
まずは2015年春の単年実績だけでリストアップします。
11/4に更新した記事
ほんとうに難関大合格実績?MARCH「合格率」を斬る!
の続きになります。
明治、青学、立教、中央、法政の学部ごとの偏差値を
大学としての持ち点として平均化したのちに各高校の合格者の比率で、
MARCH合格者の平均偏差値を算出したものです。
MARCH合格率7年間推移で上位100校(中高一貫生未卒の学校を除いた公立中高一貫校を含む100校)
のMARCH合格者平均偏差値(河合塾の目安の値)は59.25で標準偏差は0.26となりました。
つまりこの「集団の中の」偏差値60は59.51で偏差値40は58.99となります。
河合塾が提供している偏差値と、MARCH合格率の分布による偏差値の
2種類の偏差値がありますので、注意して読んでください。
まずは、偏差値60以上の学校が100校中、20校。

いやいや見事なまでに女子校ばかり。つまり受験の実偏差値以上に
法政には行きたくない、中央には通いたくない、のバイアスが顕著に表れていると
いえるでしょう。学校の所在地も加味するとまさに!という感じですね。
いっぽうで偏差値45未満の学校が24校です。

こちらは見事に共学校ばかり。中央大学に積極的に進学したいというバイアスが
関係しているようですね。
こう見ていくと、MARCH合格者の質と並行して、地理的な要素があるようです。
この集団の中の偏差値が低い学校は中央・法政への志向というより、明治・立教に弱い
と見たほうがいいかもしれません。
実際に統計をとってみて「見かけのMARCH合格率が高い、なんちゃって実績伸長校」
が表面化するのかと思いましたが、それ以上に、1都3県であっても
自宅通学を条件としたときのMARCH5大学のローカル性が無視できないことが
表面化してしまったようです。
<今回掲載校>,鴎友学園女子,横浜共立学園,鎌倉女学院,頌栄女子学院,東京都立武蔵高等学校附属,浦和明の星女子,女子学院,フェリス女学院,光塩女子学院,雙葉,湘南白百合学園,東洋英和女学院,普連土学園,淑徳与野,東京女学館,お茶の水大付属,海城,カリタス女子,白百合学園,江戸川女子
帝京大学,穎明館,大妻多摩,県立相模原,さいたま市立浦和,県立平塚,栄東,千葉市立稲毛,順天,西武学園文理,城北埼玉,江戸川学園取手,桐蔭学園,自修館,山脇学園,東京都立白鴎高等学校附属,大宮開成,東京都立立川国際,東京農大一,東京純心女子,湘南学園,獨協,城西川越,淑徳

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2015-11-04 Wed
東京の難関私大がローカル私大化している現実はなかなか客観的な数値で表現できません。ただカテゴリー「公立中高一貫校について」で、都道府県別の温度差を調べるにつけ、
地方の高校生は、早慶ですらわざわざ上京して進学しよう、とは思わないという傾向が顕著です。
学生が親元を離れない、という現象なのだと思います。
それは少子化の一側面なんでしょう。
そういったご時世の中でこのMARCH(明治、青学、立教、中央、法政)の5大学は
どうやって学生募集をしていこうと考えているのでしょうか?
そして特に私立の中高一貫の中堅校にとって、いまだ昔の感覚で
MARCH=難関大と受け止めている保護者が多いのだとしたら、今はかきいれ時に違いがありません。
学部を増やして、合格者を増やして大学のレベルが落ちないはずがありません。
かつての日東駒専という言葉が死語になっているように
(大東亜帝国という略し方も昔あったようですが)
このMARCHという難関私大くくりも近いうちに死語になることでしょう。
というわけで、この一連の記事は「進路実績=校風」の一貫ではありますが、
ここまでは「続メルマガ」に分類しておきます。
つまり「意図的に進路実績を作れるとするなら、
法政大合格者を増やしてMARCH実績を伸ばせ」を実践している、
いや結果的にそうなってしまっている学校を徹底調査、ということになります。
早慶上智に合格力がある余勢をかって、MARCHクラスを確実に撃ち落としている学校か、
ぎりぎり法政大に届いている「難関大」実績かを判別していくというわけです。
この作業をするにあたって、河合塾の大学受験の偏差値(2.5きざみ)を
MARCH各大学の学部別に調査し、区分ごとの平均値を算出しました。
学部によって難易度に差がある場合もあり、大学としての平均値を出すことで
若干の誤差が生じる可能性もあるわけですが、そこは無視します。
その大学の中のもっとも偏差値の低い学部だけを狙う戦略までは見通せませんから
ご容赦ください。
まずはMARCH5大学で、大学平均値で出た差はこんな感じでした。


かなりマニアックかなあ、と思うのですが、今度はここから2015年春の各一貫校の
偏りを算出していきます。
この河合塾データだと、(偏差値の)トップは立教で次位が明治・青学で並んでいますから、
立教が多くて法政が少ない高校と、
法政・中央が中心で立教・明治が少ない高校で明暗が分かれていきます。
もうすでに立教・明治は肯定し、青学は否定する傾向が一部にはっきり出ていますから、
首都圏ローカルと言えども、居住地によってこの5大学はもはや
気持ちの中でも等距離ではないわけです。難易度じゃなく自宅から近い大学に通いたいだけ。
特に青学は相模原キャンパスがネックになっているようです。
続きはちょっと開きますが(11/12夜)の更新で。

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2015-10-20 Tue
相変わらず、中学受験と中高一貫教育のリンクをあまり理解していない人は多いようです。高校に中学がついていれば中高一貫だと信じている。
このデータの存在を知っても、家の子の学校だけは特別、と思えるのなら、
幸せな人生を送ることでしょう。
あれ、続編のトーンがいつになく毒々しい?
そうなんですよ、9/22の記事で「不本意入学の心理的ダメージ解消期間」を
先生が解説していたアノ学校がしっかり表の中にあるじゃありませんか。
不本意入学の心理的ダメージは依然として解消できていない、と来たか。
で、最近はこれまでとまったく違うキーワードを前面に押し出して広告打っているよなあ。
そういえば、まだ時効じゃないかもしれないけど、
元いた会社のとなりの営業部が教材をその学校に買ってもらっていて、
「担当が変わったので次年度継続しない」といきなり?言われて、
「なんでそういう情報が事後にしか判明しないんだ!」って、
その営業マン、ぼろかすに言われていたっけ。
そいつの言い訳曰く、「前任の先生の施策は全否定されちゃって」
真偽のほどはわかりませんけどね。
中学を新設した学校の場合、中高一貫一期生が卒業するまで、
従来の高入生の進路実績が伸びる気配がないと、かなり高い確率で
中高一貫一期生の成果はピンチです。
同じことで、在校生に手厚いケアができない学校が、これから入る新入生を伸ばす、
とはよくも軽々しく言えることだなあ、と。
毎年、学年で1割の生徒が離脱する「中高一貫」校に入学させたいですか?
保護者のみなさん。

ま、昨日のとあわせてリストでご覧のとおり、という内容なので、
もうひとつだけ学校エピソードを。
これは十年以上前の話ですが、某世田谷区の私立中学の説明会に行きました。
中学卒業後の進路が配布された資料に書かれていました。
へ?ここ中高一貫ですよね。そう思いました。
学校としては、併設の高校の偏差値以上の外部高校に進学したことを
少しだけアピールしたかったようなのです。
それ、入学しても(高校へ進学しても)伸ばせない、って言ってませんか?
それとも中学3年間で予想外に伸ばし切っちゃったので、出たほうが幸せ、
ということ?
一部茨城県の中学にもそのタイプの学校がありますね。
県立トップクラスの水戸第一や都内の有名私立(高校)に
進学実績顕著!なんて謳っている学校が。
それもこれも、私立中高一貫の文化をうまく理解できていない人には
じゅうぶんに通用する話なのだと思います。
各社の共通アンケートにも、
「併設高校以外の中学卒業生の進路先」という欄に律儀に高い偏差値の高校名を
書いている学校がありますが、イジワルというかフェイクじゃないですか?この質問。
空欄だったり、非公表と書く学校が誇り高い?私学じゃないかな、と。
(そっちのほうが圧倒的に多数派ですが?)
それこそ何でそんな不名誉なことを回答しなきゃいけないのか?
と回答者が思っていない証拠です。
★併設高校非進学率が高い学校の中には小学校を併設している学校が目立ちます。併設高校に進学しないのは併設小出身者の比率が高い可能性が予想されます。とすると、小学校を併設していない非進学率が高い学校って?
掲載校リスト=学習院,光塩女子学院,麹町学園女子,淑徳巣鴨,城西大学附属城西,玉川学園,文化学園大学附属杉並,明星学園,明星,和光,相模女子大学,千葉日本大学第一,浦和実業学園

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2015-10-19 Mon
日本全国を見渡すと、(私立の)中高一貫文化が根づいている地域とそうでない地域がある、と書きました。東京・神奈川と兵庫・奈良を筆頭にした近畿圏では、私立中高一貫校の
ステイタスがかなり高い。ところが、です。
偽物の中高一貫校とでもいいますか、高校に中学が併設されているだけ、
もしくは一貫教育がさほど成立していない学校がけっこうあります。
心の底から中高一貫教育を受けさせたいと願う保護者にとっては、まさに地雷校です。
幸か不幸か、情報誌編集部在籍時にはこの要素にまったく気づきませんでした。
在籍した16年間の中で、ちょいちょいこれはどういうこと?
と気づいて調査してきました。例えば高入生と一貫生の進路実績の比較、とか。
併設小学校からの中学進学率が低い学校とか。
編集部在籍時にこの事実に気づいていれば、それを情報公開できたかどうか。
広告クライアント校をはじめとして、こんなに多くの学校が
中高一貫教育不成立、の地雷校として存在していて、さらに状況が悪化しているとは
ほんとうに思ってもいませんでした。2015年10月に初めてこの事実を知った、
という体たらくです。
もちろん業界の中でそういう話を聞いたことがなく、「がんばれ私学!」の
輪の中ではタブーとされてきたことなんでしょう。
10月15日更新のブログで
中学から併設高校に進学しない理由を8つ書きました。
1.中学3年間の学校生活に生徒側が不満を持っている
2.成績が思わしくなく学校側からやんわり肩たたきをされる
3.いじめなどのメンタルな問題が解決せず、環境を変えたいと生徒側が考える
4.校則が厳しく息苦しい
5.このままのレベルで学習していては生温いと感じ、もっと上位の進学校を外部受験したいと考える
6.経済的な理由から公立高校に進学したい
7.転居
8.その他
まず、理解しておきたいのは学年の5%、40人クラスなら、2人は同じ高校へ行かないということが
平均値だということです。併設高校進学率95%はきわめて普通。
そんなに外部進学しちゃうのか、とここで驚くのは間違いです。
問題は2015年に併設高校進学率90%以下だった学校を遡って調べてみると、ほとんどが
たまたま2015年だけ低かった、というわけではない、ということです。
高校で抜けるのが「校風」なのです。
勉強についていけなくて、肩たたきされたり、自主転校するケースもあるでしょう。
部活エリートを目的に入学して、挫折するケースもあるかもしれません。
いじめ、その他の人間関係の問題もあると思います。
学習レベルが低すぎて、もっと上位の進学校に替わる、というケースもなくはないでしょう。
でも安定的に「1割が抜ける」では、中高一貫で生徒を育てる気持ちに欠けている、としか
言いようがありません。
だって学校規模が大きい学校ほど抜けないのですから。
学校として何かが成立していないと感じるわけです。
さらに問題は、一部の学校はそれを隠そうとする。
中学卒業者数をアンケート回答しない。
でも前年度の中学三年在籍者数を調べればわかります。それは答えているのに。
もしかしたら、甘い覚悟の保護者が、私立ならどこでもいいや、と安易に学校選びをして
自ら地雷を踏んでいるのかもしれません。
その学校を選択する時点で危ういのかもしれません。
まあ、今回調べていてそのようにも思います。
きょうは2015年春、中学の学年規模が100人以下で、高校進学時に10%以上抜けた学校のうち、
2014年、2013年の状況も調査して3年平均もやっぱり10%以上抜けている学校です。
学校規模が小さいことはよく目が行き届いて、アットホームな学校というのは迷信なのでしょうか。
もしそういう学校が存在するのなら、これらリストの学校の存在はいい迷惑なんじゃないかと思います。
生徒募集がうまく行かない、進路実績が伸びない、という前に在校生の面倒をしっかり見る。
これ、一部の学校にとってはとてつもなく難しいことみたいですよ。
抜けたら、抜けた分だけとればいい。学校もそういう時代なんでしょうか。


掲載校リスト=愛国,上野学園,小野学園女子,川村,神田女学園,共栄学園,国立音大附,国本女子,京北(東洋大京北),啓明学園,駒沢学園女子,実践学園,自由学園,淑徳SC,白梅学園清修,杉並学院,成女学園,聖ドミニコ学園,星美学園,瀧野川女子学園,千代田女学園,帝京,貞静学園,戸板(三田国際),東海大学菅生,東京女子学院,東京立正,東星学園,新渡戸文化,日本学園,八王子実践,日出,藤村女子,武蔵野,目白研心,アレセイア湘南,鎌倉女子大学,函嶺白百合学園,聖ヨゼフ学園,橘学苑,横須賀学院,暁星国際,聖徳大学附属女子,西武台千葉,千葉明徳,東京学館浦安,二松学舎大附属柏,浦和ルーテル学院,埼玉平成,聖望学園,聖徳大学附属聖徳

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2015-10-15 Thu
それでは本日、この記事から中学受験ネットのメルマガコラムで積み残した宿題、中高の接続そのものについての一連の記事を書き始めてみたいと思います。
中高の接続と行ったときにカリキュラムがどうとか、クラス編成がどうとかの問題ももちろん重要ですが、
これからフォーカスしていくのは「在校生の満足度」という非常に微妙な要素になります。
ここをあまり意識していない学校は6年間の一貫教育で、育てる、伸ばす、ということが機能せず、
在校生に不満やストレスを残す確率が高くなると言えます。その目に見えないように思われるデリケートな部分を、
アンケートに記載された中学卒業生数と高校進学者数の比較、という手法にのっとって迫ってみます。
早い話が、高校進学時に外部に抜ける学校、ということです。
外部に抜ける理由として考えられるのは、
1.中学3年間の学校生活に生徒側が不満を持っている
2.成績が思わしくなく学校側からやんわり肩たたきをされる
3.いじめなどのメンタルな問題が解決せず、環境を変えたいと生徒側が考える
4.校則が厳しく息苦しい
5.このままのレベルで学習していては生温いと感じ、もっと上位の進学校を外部受験したいと考える
6.経済的な理由から公立高校に進学したい
7.転居
8.その他
高校進学時に生徒が減る、という現象が前記のいずれの理由によるものかは、
もちろん解析しがたいわけですが、総合的に考えて、併設の高校に進学しない生徒が多い学校は
しかるべき背景が存在する確率が高い、と言えるでしょう。
たぶん6.と7.の理由を除けば、学校側が問題解決の姿勢を見せてしかるべきと思われます。
各校の回答内容を俯瞰してみると、ある傾向に気づきます。
学校規模の問題です。学校規模が小さな学校をアットホームな
生徒生徒ひとり一人に目が行き届く学校、とみなすケースが多いわけですが、
ほんとうにそうでしょうか?
中学卒業者数(1学年)が100人未満の学校と100人以上の学校で継続率、
つまり併設の高校への進学率の平均値を見てみるとこうなりました。
●学年100人未満の学校の継続率平均値→85.6%(1都3県+茨城の95校)
●学年100人以上の学校の継続率平均値→96.0%(1都3県+茨城の182校)
驚くべきことに10%以上の開きがあるのです。
小規模集団のほうが継続しにくいのです。
もちろんここには小規模集団の中に極端な学校が存在している、ということも言えるでしょう。
母数が小さいと、1人欠けても結果に大きく反映します。
とはいえ、学年50~99人の学校の中にも20%以上が外部流出してしまう学校が5校もあり、
これは見逃せない傾向ではないでしょうか?
あくまで今回のデータは2015年春の学期替わりでの数値ですので
継続的に調査すれば多少数字は違ってくるのかもしれません。
中高一貫校とはいえ、高校進学時に5%弱の生徒が抜けるのは珍しくなく、
そこを平均的と見なすとやはり1割以上抜ける学校には理由があると見ます。
かなりセンシティブな内容ですので、1割以上の流出を示す学校は、
抜き出して推移を把握してから校名は公表したいと思います。
ということでこの続き、まずは10月19日月曜夜の更新までお待ちください。

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